最近読んだ小説は町田そのこさんの「夜空に泳ぐチョコレートグラミー」です。
5つのお話がリンクしあう短編集です。その中の「波間に浮かぶイエロー」のテーマが興味深かったです。
自分のことを変わらずにずっと好きでいてくれている人の存在について。
このお話の中では、自分は相手のことを異性として一番ではないけれど、相手は自分のことを一番だと言ってくれた。永遠に変わらないと誓ってくれた。それは本当に本当に本当なのね!?絶対に一生変わらないって証明してよ!!けど、私は別の人を愛するし、一番愛して欲しい人も別の人。
これを読むと「なんだコイツわがままな…」って思う人が多いと思います。けど、その気持ち、わからんでもない、と思う人も多いのでは?
このパターンの場合では好きだ!と言ってくれている人とは別に好きな人がいて、その人とある程度の関係を築いています。
実は彼女と似たような状態なのに気づいてなくて恋の泥沼にハマっているパターンが少なくなくて、それは自分が好きだと思っている人はいないけど、自分を好きと思っていくれている人を離したくない場合です。
自分を好きと言ってくれている人をキープしたまま、もっといい人がいないか探したいタイプの人。小悪魔的な感じ、ですかね。
もう一個は相手に好き!ずっと好き!って言われて、だったら!って相手と付き合う。好いてくれることは嬉しい。貴重な存在だ!って思いながら、自分は相手に対して実はあまり好意を持ってないのに、相手からの永遠の好意を獲得し続けるために、相手に対して頑張っちゃう人。
そして相手が自分から離れていってしまったときに、原因は「自分が相手を実は好きじゃないこと」なのに、私の振る舞いやよくない点が発見されたから、好意がなくなってしまったんだ!再び好かれるために頑張らないと!って好きじゃないのに追いかけてしまう、ってパターンも。
こうなると話がややこしいというか…深みにハマっている割にハッピーエンドにはなりにくいので、早い段階で自分が相手を気になっているのは、その人だから…じゃなくて、(永遠に思える)好意を向けられているからだ!って気づくことが必要です。
「貴方は絶対大丈夫!それでいいの!それが好き!いい!」って言ってくれる存在って、やっぱり喉から手が出るほど欲しいんだよね。女性は恋愛で求める人が多いかな。男性だと社会的地位の獲得でそれを手に入れるようとする人も多いかも。
けど、その状態ってそこから少し離れたところにいないと、欲しいと意識してない状態じゃないと手に入らない…というか、手に入っている時は「手に入っている」って気が付かないものだから。
それを欲してない時じゃないと手に入らないもの、かな。
なので自分を絶対的に肯定してくれる存在を自分が欲していることに気づく。一旦はそれは絶対に得られないもの、として、自分と折り合いをつけられないか考えてみる、すごく大事です。
町田そのこさんは他に「あの家に住む人は全員不幸になっている」って言われている家に知らずに住むことにしてしまった「うつくしが丘の不幸の家」と、弱さを持つ人たちが共鳴し合う音がある「52ヘルツのクジラたち」を読みましたが、どちらも面白かったです!全体の満足度で言うと、「夜空に泳ぐチョコレートグラミー」よりもこの2冊の方が好きかも。