人生・生き方

「エデュケーション 大学は私の人生を変えた/タラ ウェストーバー著」真実とは何か?

エデュケーション 大学は私の人生を変えた タラ ウェストーバー

一冊の本を読み終えました。なかなか重い内容だったので、一気に読み進めるということはできずに、数日かけて徐々に読んでいきました。2023年に読んだ本の中でかなり印象的。読んでよかったと思える内容だった。私の2023年の読書体験が良い感じで締めくくられるな、と。

狂信的モルモン教徒の両親により学校に通うのを禁じられた少女タラ。ケンブリッジ大学で博士号を得るまでの壮絶な半生を自ら綴る

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タラ・ウェストーバーさんの自叙伝です。9歳まで戸籍登録もされておらず、小学校から高校までは未就学、アメリカの日本でいう大検のようなもの?に合格し、大学に入学、そこから世界の名門ケンブリッジ大学の博士号を取るまでの物語です。

タラさんの幼少期があまりに壮絶で、私が知る時代の話には思えず、これは何十年前のお話だろう?とタラさんの生年月日を調べたら、86年生まれで、私よりも若いことに衝撃を受けました。

この物語は恵まれない環境からエリートに上り詰めたサクセスストーリーではありません。

いずれ世界は終わるという陰謀論を信じ、教育と医療を拒絶し、一般家庭との交流を断絶して自身の信念を家族に強要する父とそれをサポートする母。家族全員で命の危険を伴う危険な仕事をこなし、兄弟からの度を越した暴力もある。

そこから大学に進学し、テストで正解するためには教科書をちゃんと読む必要があることを知って、衝撃を受け、友達と自分が全然違うことに戸惑い…

生まれ育った環境で得た常識が新しい世界のほとんどの人にとって非常識かもしれない…となった時に、歪んだ非常識な世界で育ったとしたら、私って一体何者なんだろう?、そもそも実家は本当に歪んでいたのか?正しさは一つもなかったのか?、父親は自分の信念に忠実だったとして、母は?他の兄弟は?みんな父の信念に心から賛同していたの?、私に兄弟に、母に、身の危険が迫った時、本当に心配していた?そこに愛はあった?

私って、私の人生って一体なんなんだろう?何が本当なんだろう?私はこれからどうしたらいいんだろう?何を信じたらいいんだろう?と揺れ動く気持ちがかなり詳細に描かれていて、自分の人生や周りの人の価値観と照らし合わせると、抱えている問題の大きさは異なるものの、多くの共感と発見がありました。

人が沼にハマる時って、真実とは何か?を追い求めた時なんですよね。

あの人は本当に私のことを愛しているのか?気持ちに偽りはないか?

間違っているのは、あの人なのか私なのか?

この努力を続けていて、確実に成果に辿りつけるのか?辿りつくための本当の方法は?

などなど

タラさんもこの本を書く時に、家族の中で起こった事件や事故について、その詳細がどうだったか?をタラさんに協力的な兄弟と共に記憶を振り返ったけれど、全員その場にいて、同じものを見たはずなのに、全員の証言が異なっていて、出来事を書いていくことにかなり苦労したようです。

別に読んだ道徳心理学の本によると、人は自分の感情によって起こっている出来事の何を見るか?がかなり異なるようなので、それは当然のことですね。(いくつかのポイントを記憶に残して、その他の部分はそこに合わせて自動的に補正されてしまう)

出来事でさえ不明瞭になるのだから、その時誰がどういう気持ち・考えだったか?はさらに不明瞭です。過去を振り返るなら、振り返り時点の気持ちで「あの時は○○だった」と変化しますし。

占いのご相談では「何が真実か?」を聞かれることは多いです。

あの人にとっての真実はこれで、あなたにとっての真実はこれ。ということは伝えられるけれど、で、どっちの真実が正しいのか?とか、その真実に愛がどれくらい含まれるのか?を答えることは難しい、というか、できないです。

タラさんは最終的に「全ての真実は自分の意思で勝手に決めるしかない」って結論に辿りついたようです。私もその意見に賛成で、占いも「自分の決断」をするための良きサポーターでありたいな、と思っています。

風の時代、AIの時代、様々な情報を交錯する中で、何を信じればいいのか。何を基準に人生を歩めばいいのか。そのヒントにもなる本ですね。そして、毒親育ちで「自分らしさってなんだろう?」って思う人にもおすすめです!